第2734回 例会 「平和と紛争予防」

担当:国際奉仕委員長 米山尚登君
講師:特定非営利活動法人国連UNHCR協会 中村 恵様

  

  

特定非営利活動法人国連UNHCR協会 中村 恵様

  

  

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の支援活動
~人道支援の現場を担う元ロータリー財団奨学生~

 

 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の呼び名は「ユー・エヌ・エイチ・シー・アール」、United Nations High Commissioner for Refugeesの頭文字を、ローマ字でそのまま発音してください。

 UNHCRは 1950年12月に設立され、本部はスイスのジュネーブ、約125か国に事務所があり、 職員約9,800人のうち日本人職員は約80名です。その役割は、難民・避難民を国際的に保護・支援し、難民問題の解決に対して働きかけることです。その活動が認められ、「ノーベル平和賞」を過去2回(1954年/1981年)受賞しました。

 緒方貞子第8代国連難民高等弁務官(1991~2000年)は、日本人で2人目、女性として初のロータリー親善奨学生として、1951年にアメリカに留学されました。それは奇しくもUNHCRが活動を開始した年でもありました。緒方さんが国連難民高等弁務官に就任した1991年、湾岸戦争直後のクルド難民支援に対して、日本全国のロータリー会員が、ご寄付1億9700万円以上を集めてくださったという記録が残っています。

 緒方さんが2000年末に退任された翌年2001年に、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、難民の問題をもっと知りたいと自らUNHCRにアプローチされ、その後、親善大使を経て、UNHCR特使として今も積極的に活動されています。

 UNHCRは、紛争や迫害によって、故郷を追われた難民や国内避難民を支援しています。難民とは、保護と支援を求めて、国境を越えて他国に避難した人たちです。国内避難民とは、国内の別の地域に避難した人たちです。

 2015年末時点で、家を追われた人の数は、過去最多 6530万人となり、その数はフランスの人口に匹敵するほどです。世界総人口73億人中、113人に一人が移動を強いられていることになります。例えば、シリアからトルコ、レバノン、ヨルダンなどへ、アフガニスタンからパキスタン、イランなどへ、ソマリアからエチオピア、ケニア、イエメンなどへ、さらに南スーダンから多くの難民が流出しています。

 UNHCRでは、ロータリー財団の奨学金で留学した経験を持つ複数の学友が活躍しています。現在、スーダン事務所代表の吉田典古さん、シリアのダマスカスで上級フィールド調整官を務めた赤阪陽子さん、スイス・ジュネーブ本部欧州局・上級法務担当官の白戸純さん、タイのバンコク事務所アジア・太平洋地域パートナーシップ担当官の細井麻井さん、ヨルダンのアンマンで上級インターエージェンシー調整担当官の神山由紀子さん、南スーダン勤務後にタイのカンチャナブリで保護官を務めている阿阪奈美さん、合計6人すべて女子職員です。

 また、この厚木RC推薦で1987年にアメリカに留学された中満泉さんも、元UNHCR職員(1991-97年)です。中満さんは現在、国連事務次長補、国連開発計画総裁補兼危機対応局長であるとともに、元国連難民高等弁務官であるグテーレス国連事務総長の特別顧問(難民・移民フォローアップ担当)も務められています。

 赤阪さん、阿阪さん、中満さんは、2016年11月27日に東京で開催された財団100周年記念シンポジウムにパネリストとして参加されました。「ロータリーの友」2017年1月号に掲載された記事「ロータリー財団100周年を祝う」をご参照ください。

 実は、私も財団奨学生として、1983-84年にフランスに留学させていただきました。1989年にUNHCRジュネーブ本部に就職し、東京勤務を経て、1997-99年にUNHCR職員とミャンマー北西部ラカイン州で活動しました。その後、2000年に国連UNHCR協会の設立に伴い、国際公務員からNPO職員に転職し、国連の難民支援活動を後方から支える募金・広報活動に従事してきました。

 国際社会は現在、第二次世界大戦以後最大の難民危機に直面していますが、難民保護のための資金は大幅に不足しています。民間からの資金協力の輪を広げるために、国連UNHCR協会では、私たち一人ひとりが緊急事態・長期支援を支える毎月引き落とし 継続支援「毎月倶楽部」への参加を呼び掛けています。

 また、2016年5月、UNHCRは「グローバル・シェルター・キャンペーン」を開始し、2018年までに難民200万人のためのシェルター建設または改善のための資金提供を民間セクターに呼びかけています。

 シェルターには家族用テント、仮設住宅、借家など様々な形式がありますが、難民にとって、暴力や迫害による肉体的・精神的ダメージから回復するために必要な基盤となります。例えば150万円あれば、5人家族用のテント(約6万円/張)を25張届けることができます。

 2018年まで継続されるこのキャンペーンに、ロータリーの地区やクラブからのご協力をご検討いただければ幸いです。ご参考として、「ロータリーの友」2016年11月号に寄稿させていただいた記事「難民にシェルターを」をご一読ください。

(ご質問等は中村まで nakamura@japanforunhcr.org)

クラブ会報・IT委員会 2017年 2月 07日 火曜日 | | 例会